このページにお越しの方は専門知識のある方と(②以降の欄に飛んでください)、全く労災の知識のない初心者が居られると思いますので、労災事故のうちまぎらしもの ①労災保険とは ②通勤災害 ③過労死 ④社員が倒れたら4項目を拾い出してみました。ご不明な点はお問い合わせからお尋ね下さいの

① 労災保険とは

労災保険は労働者災害補償保険法の略称で、労働者災害を政府が補償する保険法律と分解できますが、労働基準法の災害補償規定をこの法律で裏打ちしたものと考えれば良いと思います。

労働者とは労働基準法で公務員と船員保険の加入者を除き日本政府の管轄内(海外の事故もok)の事業所で働き、労働の対価として賃金を支払われる者(詳しくはこちら)と定められていることから職業の種類や、アルバイト、パート、臨時、契約社員、派遣社員、嘱託社員、正社員、などの各種呼称、また、国籍、就労の合法性を問わず労働者となります。

災害とは仕事中、海外出張、または、通勤途中に発生した怪我、それらを事由として病気になったことを云い、

補償とは治療費、休業補償、障害補償、遺族補償、葬儀費など一定の給付を約束するもので損害の賠償では有りませんが、同一価額で雇い主に2重請求はできません。

保険とは其々事業所の賃金額を基に一定の数理によって事業の持つ危険度により保険料を徴収、労働者は入社した時から退職するまで無記名の強制加入で民間保険のように自由加入はできません。

法律は強制法で一人以上労働者を雇用するものは、加入の義務があります。

従って、労働者が災害に遭遇した時は、誰でも自由に 労災保険を請求することが出来、発生した労災事故を理由として請求書が提出されれば、監督署は黙って請求者に保険金を支払ってくれます。

労災保険は、被災者に何か安全規定違反があったから保険金を支払わないとか減額をするということはありません

変に監督署が煩いからと労災事故を、病院には健康保険で、休んだら有給休暇と会社の持ち出しで辻褄を合わせることは大変に愚かで、発見をされると「労災隠し」として処罰されかねません。

また、外国人だから、違法就労だからと言って労災保険が使えないということは有りません。何故なら労災保険法には外国人、不法就労者には労災保険を支給しませんという条文はありませんから大手を振って労災保険を請求することが出来ます。

就労ヴィザの無い人、(資格者の家族?)オバーステイ、就業条件外就業であるか否かの判断は入国管理局の業務で、労災保険を扱う監督署の業務では有りせんから心配はご無用です。

日本の会社が安全配慮義務を怠って事故を発生させたなら、日本できちんと治療や補償を受けるよう企業も協力をすべきで、これこそが、グロバル化した日本企業の責任だと思います。

②     通勤災害

通勤災害とは住居から就業目的の場所までの間を合理的な方法で移動中に発生した災害を、労災保険で業務上と同様に補償しようと言うものです。

然らば通勤とは、通常は自宅の境界を出て公道、又は、公道に順ずる道路になったところ(マンションなどの共同住宅はドアの外)から就業する事業所の施設の境界(共同ビルの場合は事業所のドア)までの間を合理的な方法で通勤をするために移動する事を言いますが、法律が出来た頃に想定した取り扱いとはかなり変わってきました。

ここでいくつかの疑問をお持ちだと思います。

A 事業所によっては通勤費を支給するために通勤届などの提出を求めておりますが、これと異なる経路、方法を選んでもよく、「合理的」とは、どんな移動手段でもよく、単独での公共交通機関、車、バイク、自転車、徒歩、相乗り送りの車(事業所から500メートル先の妻の事業所送りはOKと言う判例が有る)での組み合わせでも良く、その時々の交通事情(事故・行事・災害などで迂回する)を配慮して認定をするようになってきました。

B 通勤経路はかなり幅を持って理解をして宜しいようになりましたが、許される範囲はあくまでも合理的(一般常識)な範囲で、常識の範囲を大きく迂回すると逸脱として不支給となる可能性を含んでいます。 

C 勤務時間、または、事業所の業務の関係で自宅以外に常用のアパート、友人宅、ホテル、その他の宿泊設備からの通勤も通勤災害として認定されるようになりましたが、疑問を持たれる具体的な事案は所轄の監督署に確認を求める事が必要と思います。

D 単身赴任の社員が土日に本宅に帰宅する。また、ここから会社に出勤する場合の災害も通勤災害として扱われることになっております。

通勤経路の逸脱

通勤途中の合理的な通勤経路を逸脱すると、再び、通勤経路に復帰しても逸脱時点から先は通勤災害と認められなくなると言う特徴があります。ここで注意するのは、俗に言う直行・直帰で出勤時の取引先への立ち寄り、帰宅時取引先への立ち寄りは自宅・事業所から取引先を経由しての出勤、又は、帰宅となり、それが通勤経路であっても通勤災害でなく業務上扱いとなります。

そこで、逸脱の範囲を通勤途中で著しい迂回でない範囲での生活に必要な買い物、短時間の本屋に立ち寄り、クリニング店に立ち寄りなどはOKとして扱われるように成ってきました。法律の制定当時、独身者はOKだが妻帯者は駄目と言うような判断がされて居りましたが、共稼ぎが多くなった現在はこの考え方が否定されるように成ってきました。

然し、歴然と飲食店で飲食をする、パチンコをする、映画を見る、恋人とデートをするになるなどは逸脱と判断されます。例えば、事業所の打ち合わせで遅くなり、近くの居酒屋で食事をしながら打ち合わせを続けた後に駅の階段で酔っぱらって怪我をした。

この場合、会議が遅くなったから居酒屋で食事をしながら会議を続けようという業務命令によるものなら会議が終わるまでが業務上、その後が通勤災害となりますが、(泥酔はダメ)会議や打ち合わせの内容が如何に会社の業務目的であったしても任意会議となると逸脱となり通勤災害として認められなくなる可能性があります。

いずれにしても、疑わしい事件は法定の労災請求書類をポンと出すのでなく、災害が発生した事由を顛末書なり、申告書なりにして通勤災害であることの申告を法定書式に添付するなどひと工夫が必要だと思います。

最近駅前にある軽食店で食事をするのは、事業所が福利厚生費の削減で社員食堂がなくなった現在、事業所の食堂の延長線での食事と同じに考えても良いのでないかと思いますが?如何でしょう

     過労死

世界的な共通語となった「過労死」は、これぞ過労死と言う定義は無く、学卒社員から定年過ぎの総ての労働者の過労問題が対象で、その扱いは何も死亡ばかりでなく経年や遺伝、生活習慣によって発生する動脈硬化、動脈瘤などの基礎疾病に、長時間労働や一過性の過重労働によって発生する脳出血、脳梗塞、くも膜下出血、高血圧性脳症などの脳の病気。心筋梗塞、狭心症、心停止、解離性大動脈瘤など心臓の病気、極度の緊張下で働くことによって精神的な負担の増幅によって発生したうつ病や職場のいじめ、このような状態を原因とする自死等を含めて広い意味で使われて居ります。

過労死の判断

過労死は労災事故の業務上の災害として扱われるものですから、発症原因が業務に起因するものでなければなりません。過労死か否かの判断は過労と言うくらいですから、明らかに「業務による過重負荷を受けた異常な出来事、短期間の過重な業務、長時間の加重業務で脳・心臓の病気が発生した場合」が中心に考えられてきました。

その基準は、時間外労働が月100時間、または、2〜6か月平均で月80時間を超えると高リスクの健康障害になる恐れがある。長時間であれば「過労死」となるかと言うとそうではありません。不規則な勤務、拘束時間の長い勤務、出張の多い勤務、交代制勤務・深夜勤務、精神的緊張を伴う業務など等の就労態様の諸要因を含めて総合的な判断で裁定されます。

過労死の判断はある条件ならOK,同一と思われる事件でもNOとなる場合があり、治療費はOKで他の給付はNOと言うような中間給付というものはありませんから、まさに裁定如何によっては天国と地獄の分かれ道になります。

其れだけに監督署に過労死の請求を提出するときは,裁定を行う監督署の職員が過労死として認定できるような裏付け資料の準備をすること、特に勤務時間が把握できない管理職などの労災請求は、勤務実態を多角的に分析して、あらゆる面から裏付けを固める等の準備が必要となり、状況資料より物的証拠が裁定や判決判断の基礎となる場合があります。この努力は監督署の不支給に異議を申し立てる場合、(審査請求・再審査請求)また裁判を行うことも考えて準備をする必要があり、一度不支給になると其の裁定を取り消すのは物凄いパワーが必要になります。

過労自殺 

これは精神障害が労災として認知されてから10年そこそこで、労災保険の請求については被災者が自らの損害を立証請求することが原則で、かたや行政としてはこれを判定するために膨大な時間を必要とすることから、相互の利便性を考え、精神障害判断の物差しとして,ICD−10と言うガイドラインを用いることにして、それを被災者・行政が用いればスムースに業務処理ができることになったが、過労死は全国的にも請求件数が少なく、裁定基準を軽々に論ずることは差し控えます。

具体的な請求事案は、事案ごとに請求の主張や裏付け書類の組み立て方が変わりますので、しっかりと腰をつけて、あらゆる方向から検討が必要で軽はずみに請求をしないとは言いにくいものです。一度請求をすると後で取り返し付かないことが発生する場合がありますから充分以上の注意が必要です。迷われたらお問い合わせから電話なりmailなりで問い合わせをしてください。

    社員が倒れたら

会社内であっても、自宅であったても、また、いずれの場所であっても、社員が脳や心臓で倒れた、または、自殺したら「過労死」で有るか否かを確認する必要があります。

人間は20代から老化が始まるといわれ、高齢に成る程遺伝要素と生活習慣によって蓄積された基礎疾病が、外部の環境変化に対応する能力に個人差が出てきて、脳失血や心臓発作などで倒れることがあります。また、毎日のように人身事故で電車が止まる時代、古い感覚では考えられない事由で自死が発生していると報じられております。

この処理を放置すると突然遺族から「過労死」請求の電話に続き内容証明郵便物が舞い込むことが報告されております。

遺伝的に脳疾患を持つ人は、遺伝要素を持たない人より脳疾患になりやすいという。このような従業員が毎日3時間程度の時間外労働をしていたら遺族から過労死ではないか? 他の従業員からも過労死ではないと囁かれ、会社の対応に強い関心が寄せられます。

このように社員が倒れたら、会社は事件から逃げないで、遺族の立場で率先して従業員の過労死の有無の確認に向けた調査を開始、過労死請求の可否を判断、事件解決の指導的な立場で請求が給付に繋がるような協力をする事をお勧めします。

労災が給付されれば遺族の救済、不支給なら会社の安心です。

これこそが明日に向けた労務管理で、全従業員に向けた会社の安心のメッセイジだと考えられます。

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