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社労士よもやま話(6)
もう20年も昔の話、クライアントのゼネコンが貯水槽の防水工事を下請けに発注、 それから1週間後に防水工事の社長が、従業員5人を連れて現場に現れ、送風機を取り付け、地上で防水モルタルを作り、準備完了とばかりに社長が貯水槽内に降りていった。
ところが,貯水槽に降りた社長からなかなか返事がない、地上では送風機のエンジンが音を立てている。従業員が水槽内を覗くと懐中電灯が一点で止まっている。大声を掛けたが返事が無い。それっと、従業員が倒れている社長を救出し救急車で病院に送ったが酸欠で帰らぬ人となった。
葬儀から20日ほど過ぎた日、ゼネコンの社長から筆者が呼ばれ、被災者が下請けの社長で当社に責任は無いと思うが、貴重な協力業者、借金もある様だし私が口を出すわけにはいかない。ほかに頼れる人が居ないので、費用の総てはゼネコンの当社が負担するので、下請け会社と当社が旨く両立するような経営プランと、労災保険を初めとする色々な保険などの請求や、その他の法律事務をお願したいとの依頼でした。
後日、ゼネコンの社長に供なわれ被災者宅を訪ねた。其の時、被災者の奥さんは少し痩身だが、安物の洋服、化粧もしない飾りけの無い極くごく普通の奥さんだった。
ひと通りの挨拶と説明の後、事件を引き受ける事になって、こんな事件があると大きな金が動く、親戚や知人から金を貸して欲しいといわれる事が良くある。
お金は貸したら戻らない。お金は私の自由にならないと言って断りなさい。と忠告をすると、同行のゼネコンの社長は『この先生の言う事を聞けば間違い無いから』と付け加えてくれた。
防水工事会社の運営方針は、筆者の提案で被災者の弟を社長に、奥さんを会長に就任させ、葬儀の後始末、特別加入の労災保険、厚生年金、生命保険の請求、借り入金の返済折衝、法人の名義変更やらで3ヶ月も費やした。
その頃の奥さんは、事故のショックから立ち直って少し元気が戻ったようだった。金融機関の対策もすべて終わり、最後に労災保険、厚生年金から支払われる年金で生涯生活に困らない事が確認できる年金証書が交付された頃は血色も良くなり、薄化粧も見えたように思われた。
それから半年も過ぎた中秋の頃、監督署から手紙が来たとので見て欲しいのと、お世話になったお礼もしたいので時間を作って欲しいと言う電話であった。
相手の指定するレストランに出向いたところ、深々と頭を下げる奥さんからは被災当時の姿はなく『青江美奈』張りの髪と化粧、細身の体を胸元の広いピンクのブラウスと、腰がピット引き締まった黒のパンタロンで包み、黒のエナメルバックを空け、監督署からの通知書が入った封筒を差し出した。
話は通知書の説明に移り、
「遺族厚生年金はどんな事情の死亡事由であっても、遺族であれば生涯年金が貰える。 もう一つの労災は国が御主人の代わりに奥さんを経済的支援するもので・・・・・・・・・・・」
『はぁ・・・・・ はぁい・・・、 』
「二つの年金は税金も掛からないし、奥さんが新しい人と結婚をしない限り、社会保険事務所も監督署も・・・・・・・・・」
『 はぁーい・・・・・・・・・・』
食事が始まると筆者の横隣にぴたりと座り、両手で勺をする。用向きの説明への返事はうわの空で聞いているように感じられる。
『あのー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ですもの、お解かりになって』「????????・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
『せんせいー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ね?・・・・・・・・・ですの』
この光景は、一瞬歌舞伎町に舞い込んだかと思う雰囲気を辺りに漂わせる。
経済的に裏打ちされ、多くのしがらみから解放され、成熟した女性の本性は、何を求め魔物のように変身するのだろうか。
あなたは何を連想いたしましたか?。
うーむ・・・・・・・ご正解・・・・・・・・貴方の連想通りでした。
・・・・・・それでは・・お後が宜しいようで。
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