社労士よもやま話(8) 過労死年金受け取り拒否

  観光バスの運転士が急性心筋梗塞で今朝死亡をしたと言う電話が朝一番でクライアントから入ってきた。 

  事情を聞くと、被災者の運転手は昨日の朝8時頃、中部地区の観光ホテルで宿泊客を乗せて出発し、途中箱根の観光地を巡り、東京の観光地を経由して都内のホテルに外人客を送る予定。

  ところが、9時半頃、箱根芦ノ湖の駐車場でトランクから客の荷物を出そうとして意識を失い倒れた。

 その後、通訳兼ガイドの女性が何回も大丈夫かと尋ねたところ、被災者となった運転手は大丈夫と言い車の中で11時頃まで客の帰りを待っていた。

 この事はガイドを経由してクライアントの会社にも連絡があり、会社からも被災者に電話を入れたが大丈夫と言う返事であったが、午後2時頃、胸がパクパクすると伝えてきたので、不思議に思ったクライアントは直ちに交代要員が海老名のパーキングエリヤに向かわせた。

 被災者は同僚の運転する車に乗り換え、本人が以前入院した事のある多摩地区の病院に向かい午後8時に到着した。問診に同席した同僚は、本人が箱根で倒れた時ニトロを飲み、一時快復したが胸がパクパクするのが可笑しいと医師に話していたと言う。

  病名は急性心筋梗塞で解胸手術を行ったが、問診から4時間後に死亡した。

  被災者には二人の奥さんが居て夫々に子供が一人ずつ居るが、既に離婚をして現在は独身。

  緊急連絡を受けた兄弟が葬儀を行うことになったが、子供たちには連絡が取れない、このような状況での会社のとるべき対応を求めてきた。

 そこで、通常の葬儀参列を指示し、不確実であるがそれまでに収集した情報を基に、翌々日、被災者が業務上死と思われる状況なので,それに向けた対応が必要である事を社長に説明。それまでに聴いた就業状況は、早いときは朝5時に出庫、帰りが11時頃になる事もあるが、平均的な拘束時間は15時間前後だと言う、この状況から過労死が予想されることから、正確な就業状況の調査をする事にして、その結果を見てから状況判断にする事にした。

 遺族となる二人の相続人である子供との関係を調べる必要から、被災者の戸籍、住民票、遺族の戸籍、診断書などと、被災者の兄に了解を取り、被災者の家宅から子供との生計関係維持証明資料などを家宅捜査のようにして収集を初める一方、会社としての方針を決める必要から社長に意見を求めたところ、

 クライアントは陸運局の許認可事業であることから、『本音を言うと事業運営上陸運局からにらまれるような労災扱いは困る。

 できれば私傷病で何とか解決をしたいが、さりとて、多くの補償金を支払う余力は無い』。と言う事であった。その折、此のまま放置すれば、過労死だと言って損害賠償の請求が何時来るか判らない。民法上の請求権は損害知った時から3年で、その期間が何十年先になるかもしれない。その間びくびくするのか、それとも未払いの賃金も有る事だから積極的に死亡の事実を伝え、万一過労死となっても解決金を少なくするように努力すべきと提案した。

 そこで、クライアントから全面委任を受け、相続遺族二人に内容証明で死亡の事実と未払い賃金があること、被災者の兄弟から預かった約20冊の貯金通帳の扱い方を相談したいと通知した。

  時を待たずして、事情を理解した相続人から事件解決に向けた委任を受け、被災者の資産内容の調査を開始したところ、20年前に1700万の使途不明ローンがあり、離婚した二人の妻は恐ろしい連発、早く関係を切りたい、(既に切れているが)然し未成年の子は過労死が認められれば1500万円程の一時金等が給付される可能性があり、更に、生計関係が認められれば厚生年金も受領できる事を説明したが、元妻である二人は被災者に相当の恨みがあるのか、一切関係を持ちたくない、また、未成年の子供に被災者の死亡を伝えないで欲しいとの希望も出た。

  そこで1700万の使途不明ローンから逃げるには、死亡を知ってから3ヶ月以内に相続放棄の手続きを行うことによって、今後被災者の遺産をめぐって争に巻き込まれることはなくなると説明を行った。

  この提案を元妻たちは十分に理解し、成人になった子と、未成年の母親から委任を受けて相続放棄の事務と未払い賃金などの事務を含め総ての手続が完了した。

 これにより、被災者が過労死として認定されても、相続人たちはクライアントである会社に対し損害賠償の請求を行うことは出来なくなった。

 その後、被災者に対し数件の債権者から問い合わせがあっが相続放棄の受理提示で事なきを得ている。

 しかし、就業記録から見ると過労死が認められるケースと思われる事件で、磨き上げた社会保険労務士の敏腕が振るえず今でも勺前としない事件解決でした。

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